JANCAEについて

非線形CAE協会設立趣旨

電子計算機(コンピュータ)がまだほとんど一般には普及していなかった1956年に、Turner等によって有限要素法が作られ、汎用コンピュータが全盛期を過ぎようとしていた1980年にLemon等によりCAE(Computer Aided  Engineering)の概念が紹介された。以来、コンピュータ手法の工学分野における応用は多岐に渡る。初期の有限要素法やCAEの開発、および応用は、ごく一部の構造系の研究者や技術者に限られていたが、EWSやPCが広く普及した1990年代に入ると、有限要素法等に代表される数値解析手法は、構造のみならず、流体、電磁場、そして化学反応に至るまで適用が拡げられた。それに付随して、対象となる分野は益々拡大し、さまざまな分野のCAEソフトウェアの隆盛期が訪れた。CAEという言葉が、理工学全体のコンピュータ・シミュレーション手法を代表するまでに発展を遂げたのである。この拡大傾向は 2000年代に入っても止むことは無く、むしろ加速している感がある。個別の解析から多物理領域に跨る複合・連成した「マルチ・フィジックス」解析へ、定常または擬似定常状態を仮定した解析から、運動または反応している状態の「現実模擬・シミュレーション」へ。そして線形解析から、現象を忠実に表現するための「非線形」解析へ、CAEの守備範囲は大きく広がっている。一部の研究者や開発技術者のみに限られていたCAEは、ソフトやハードの環境が整うに従い、一般的な設計・製造技術者へも広く普及し、こうした人々までもが、マルチ・フィジックス・シミュレーションや非線形現象を取り扱う時代に突入した。このような背景を考えると、CAEはその黎明期、成立期と言う第一世代の発展期に終わりを告げ、新たな総合化と理工学現象の現実模擬という、非線形性を当然のごとく仮定する第二世代に入ったといえる。このような時代が要求している新しい取り組みを支援する活動が必要であろうことは説明するまでもない。

対象とする現象が非線形性を有する場合、線形を仮定したCAEの経験を単純に拡張することは一般には不可能であり、CAEに携わる全ての人が、経験という小さな殻に閉じこもることなく、弛まなく未知のものに対し、検証可能な数理的手法を駆使し理工学における非線形現象に立ち向かうことが要求される。しかしながら、既存の大学学部・大学院カリキュラムの中で、こうした複合的な問題に対処するための、組織的なCAEカリキュラムを形成するには、多くの時間が必要であり、産業界からの「今すぐにでも」という要請に応えることは難しい。また、CAEは実現象を相手にする産業界が中心になるもので、学界はあくまでそれを支援する立場であり、単体のソフトやソフトベンダー一社でカバーできるものでもない。やはり新しい枠組みが求められている。このような状況に鑑み大学や官・民の研究所、産業界の有志が集い、全員で新しい時代の要請に応えて行きたいという思いで、非線形CAE協会を設立した。

非線形CAE協会は、2001年度から始めた「非線形CAE勉強会」を基礎とし、世の中の新しいCAEの要求に応えることを目的に、大学、官・民の研究所等に活動基盤を置く研究者と、CAEを実務として使用し、その可能性を広げている技術者とが手を結び、産業界が真に欲する新しいCAEを推し進めるための基盤作りをする機関である。

新しいCAEの要求に応えるために、これまで開催してきた「非線形CAE勉強会」を中心に、非線形CAEを組織的に学び、参加者がお互いに切磋琢磨出来る環境作りを目指している。非線形CAEの全体像を見るための「非線形CAE勉強会」、非線形CAEにまつわる個別的な問題を集中的に取り上げるための「非線形CAE分科会」、非線形CAEに関する世界的な活動を紹介するための「非線形CAE活動WEB」、世界的に著名な非線形CAEソフトの開発者や研究者による「非線形CAE講演会」、非線形CAEに関する基礎的な文献や論文の紹介をするための「非線形CAE図書WEB」、非線形CAEソフトや解析のための規準作りを試行する「非線形CAEベンチマーク」、非線形CAEを学習するための資料作りを中心とする「非線形CAE学習マニュアル」などの活動を、随時進め、こうした活動を協会社員・会員のみならず、広く一般に公開し、それぞれの活動に、多くの人が自らの意思で参加することが出来るようNPOの形態を取った。

 

以上のような趣旨に賛同でき、自らも活動の一端を担う志のある方々、非線形CAEを自ら学び、その応用を心がけるための基礎力・応用力を磨くために、協会のさまざまな企画に参加してくださる方々を、協会員一同、心よりお待ちしております。