非線形CAE勉強会

第3期非線形CAE勉強会・シラバス・第4日目

 

第4日目:CAEにおける有限要素IIとベンチマーク事始 [ 2005年5月25日 ]

【汎用CAEソフトに含まれる有限要素:Part II 要素の利用】
講義A 「LS-DYNAにおける要素とその特徴・実例」(120)
〔梅津康義@日本総研、岩田徳利・西垣英一@豊田中研、菊池昇@ミシガン大、小林卓哉@Mech.Des.&Anal.〕

前半は、LS-DYNAに用いられている要素開発の経緯や、それに関わる貢献者・参考文献等を紹介し、後半は板成形と衝突の問題に注目し各要素の特徴や実例を紹介する。最後に他の陰解法CAEソフトとの対比においてLS-DYNAの要素の特徴を調べる。

  1. LS-DYNAの要素開発の経緯と概要

    陰解法と異なり、要素に関わる計算時間が全体の計算コストに大きく影響する陽解法では、用いるられ要素に「精度」はもちろんだが「計算速度」に軸足をおいて開発されてきた。このような背景のもとで、LS-DYNAで用いられる要素(ビーム、シェル、ソリッド)の開発経緯や特徴について述べた上で、大変形に対する考え方、アワグラス補正方法などを紹介する。

  2. 板成形問題におけるLS-DYNAの要素・物性について

    板成形問題において、成形のみならずスプリングバックへの影響を考慮した上で、使用要素や材料モデルについて選択のポイントを述べる。また、摩擦のモデル化や板成形特有の絞りビード、金型のモデル化についても要点を紹介する。

  3. 衝突問題におけるLS-DYNAの要素・物性について

    自動車の衝突解析を中心にLS-DYNAの要素との関連について述べる。ここでは、まず自動車の衝突安全試験の説明と解析例を紹介した上で、一般的に車両モデルに用いられる要素や物性の概略説明を行う。また、いくつかの例題を用いながら、要素の特徴(精度、コストなど)を説明する。

  4. 他の陰解法CAEソフトとの対比

    ABAQUSとLS-DYNAで用いられている代表的な要素を使用して、ベンチマーク例題を解析し比較検討する。

講義B 「高分子樹脂材(ゴム・ポリマー)のための要素とその特性」
〔平郡久司@ブリヂストン・青木雅司@豊田合成〕(60)
  1. 非圧縮性ロッキング (平郡)

    ゴム材などを有限要素法により解析する場合、体積が変化しないという非圧縮性に対する考慮を怠ると、正しい解が得られないケースがある。
    本講義では、この非圧縮性ロッキングに関する理論とその回避法について述べる。

  2. 高分子材の解析例 (青木)

    樹脂材、ゴム材の3次元ソリッド要素を使った解析において、材料モデルと有限要素の種類を変えた組み合わせでの挙動について比較する。

    • ・材料モデルの種類: 弾性、弾塑性、超弾性
    • ・有限要素の種類: 完全積分要素、低減積分要素、非適合要素、ハイブリッド要素
講義C MSC.Marcにおける要素とその特徴・実例
〔佐々木彰司@MSC.Software〕(60)
【CAEにおけるベンチマーク】
特別講義 「数値解析における丸め誤差の数理」
〔山本善之先生〕(30)
概論 有限要素法とベンチマークの数理
〔野口裕久@慶応大〕(50)
  1. ベンチマーク(ラウンドロビン)とは?
  2. 何のため、誰のためのベンチマークか?
    • 2-1 ベンチマークの数理
    • 2-2 ベンチマークの心理
    • 2-3 ベンチマークの道理
  3. ベンチマーク解析例
    • 3-1 パッチテスト
    • 3-2 破壊解析
    • 3-3 シェル
    • 3-4 塑性加工
    • 3-5 キャビティフロー解析
  4. プログラムの検証から人を育てるためのベンチマークへ
    • 4-1 解析者を育成するためのベンチマークテスト
    • 4-2 ベンチマークを作れる人間の育成
      • ・物作り、現象を知る人からのベンチ(実験解)
      • ・物理、数学を知る人からのベンチ(理論解)
  5. 非線形解析のためのベンチマーク
総括 「CAEベンチマーク事始−計画と今後の活動予定」
〔菊池昇@ミシガン大〕(30)

非線形CAEソフトは非線形力学や非線形数値解析法などを用いて非線形現象を解析・シミュレーションする道具であり、ソフトが準拠している力学などが現実の非線形現象を正しくモデル化しているとは限らない上、現象を微分方程式などで表現された数学モデルを有限要素法などの非線形数値解析手法で微分方程式を近似的に解くため、少なくとも二種類の誤差を持つことになる。また現象の数学モデルを解く方法が唯一でないため、各ソフトが用いている方法が保有する誤差もあるため、ソフトそのものに準じた誤差も考慮しなければならない。こうした誤差を正しく認識し、使用している非線形CAEソフトの信頼性を保障するための様々な活動を、「CAEにおけるベンチマーク」と呼び、この課題に対してどのような取り組み方をしているのかを、次期非線形CAE勉強会で主要テーマとして取り上げる予定である。このまとめでは、ソフトで重要な役割を担う材料構成方程式と有限要素に主要テーマにした今期の勉強会の成果を踏まえ、どのようにベンチマーク問題に取り組むかの概要を話し、次期非線形CAE勉強会へ向かっての活動を報告する。