CAE宝箱

小さなつづら2

National Information Service for Earthquake Engineering University of California, Berkeley がWEBページ
https://nisee.berkeley.edu/elibrary/software.html
で提供しているCAEソフトの中には、SAP-4やNONSAPなど歴史的にも名高いプログラムのソースコードがあります。

(by 平郡)

SAP4の思い出

2003.3.22 株式会社くいんと 石井惠三

1970 年に出版されたZienkiewiczとCheungの有限要素法の訳本を購入して、構造解析のプログラムを書き始めたのがきっかけでこの世界に入った。当時は製造業から目的に応じたプログラム作成の仕事がたくさんあり、教科書のプログラムから独自に機能強化を図り、自分のプログラムも1975年当時には、熱・弾塑性・クリープ解析にまで発展し、対象も原子炉圧力容器まで広がっていた。

ちょうどそんな頃、SAP4というプログラムに出会った。カリフォルニア大学地震研究所から、当時400ドルで2400フィートのテープに入ったソースプログラムを入手することができたと記憶している。

それまで、三角形の定歪要素か、2つの三角形を平均した四辺形要素という幼稚な要素しか使っていなかった自分にとって、たった400ドルで、トラス、ビーム、平面応力/歪、プレート/シェル、ソリッド、厚肉シェル等、バラエティに富んだ要素ライブラリを持ち、かつ動的解析までサポートされていたことに、大きな驚きを感じた。

SAP4の中には、当時としては最新のテクノロジーも含まれていた。Wilsonの非適合要素、固有値解析手法としてBatheの開発したサブスペース反復法、時刻暦応答解析の時間積分法にニューマークのβ法を改良したWilsonのθ法、等々。

非適合要素に接し、研究者ではない自分にとって、パッチテストに通らなくても、曲げが支配的な問題に良い答えを出すのにびっくりした。そして、このことがその後有限要素そのものの特性に興味を持つきっかけになったと思う。

さらにSAP4は、大きな1つの配列を分割して使うダイナミックメモリ管理の手法を教えてくれた。14000行のプログラムの中にメインメモリでは解けない大きな問題に対しても、外部記憶を利用して解く方法さえ含まれていたのである。その後、NONSAPも入手したが、ここでは可変節点要素の概念と、アクティブカラム(スカイライン)法が参考になったが、SAP4に比べるとバグが多かったように思う。

私はWilson教授がSAP4を公開したことは、その後の有限要素法に携わる多くの研究者、実務者にとって計り知れない貢献をしたと信じて疑わない。

その後、いろいろな所で多くのプログラムを見る機会があったが、このプログラムがベースになっているであろうと想像されるものに市販のソフトウェアも含めて数多く出会っている。 総節点数:NUMNP、総要素数:NUMEL、材料総数:NUMMAT。。。。。約30年が経とうとしている今も、Wilson教授の意志と、プログラムは脈々と受け継がれ、生き続けている。