非線形CAE勉強会

第10期非線形CAE勉強会・シラバス

 

第2日目:強度・剛性CAE-II (2006年11月12日日曜日)

2-1 構造の強度・剛性CAE
〔藤井文夫@岐阜大〕(50)

この講義では、材料と構造の強度に関する簡単な導入部(比較や定義など)のあと、構造の強度と剛性に関する非線形計算と、構造の座屈強度を中心的な話題として、つぎのような項目について講述する。

  • 非線形構造系の剛性とは
  • 非線形構造系の強度とは
  • 平衡状態の安定性とは
  • 構造の強度と安定性
  • 座屈強度とは
  • 前座屈解析でやるべきこと
  • 後座屈解析でやるべきこと
  • 座屈解析の実際の計算手続き
  • 例題など
2-2 強度・剛性CAEのための塑性・クリープの力学
〔大野信忠@名古屋大〕(80)

本講義では、金属材料の非弾性構成式の力学的基礎と特徴について解説する。

  1. 塑性構成式の基礎
    • 1.1 初期降伏曲面と後続降伏曲面
    • 1.2 降伏曲面の凸面性と法線則
    • 1.3 負荷と除荷
    • 1.4 塑性変形の非圧縮性
    • 1.5 偏差応力
    • 1.6 Mises相当応力と累積非弾性ひずみ
    • 1.7 等方硬化と移動硬化
  2. 塑性構成式
    • 2.1 完全塑性モデル
    • 2.2 等方硬化モデル
    • 2.3 線形移動硬化モデル
    • 2.4 非線形移動硬化モデル
    • 2.5 多線形移動硬化モデル
  3. クリープ構成式
    • 3.1 クリープ曲線
    • 3.2 定常クリープモデル
    • 3.3 時間硬化モデル
    • 3.4 ひずみ硬化モデル
    • 3.5 修正ひずみ硬化モデル
  4. 高温非弾性構成式
    • 4.1 古典的分離型モデル
    • 4.2 速度依存分離型モデル
    • 4.3 統一型モデル
2-3 特別講演
〔広島大学教授 澤俊行先生〕(60)
2-4 強度・剛性CAEのための破壊力学
〔菊池正紀@東京理科大〕(80)

破壊力学が日本に導入された時期は1970年代の初めで、ちょうど有限要素法の研究が日本で本格化した時期と重なります。き裂先端の力学的状態が有限要素法で詳細に調べられることで、破壊力学は大きく進展してきました。現在も数値解析手法は破壊力学研究の最も重要な手段の一つです。ここでは破壊力学の一般的な方法論と基礎的な考え方について説明します。

  1. 破壊力学はなぜ必要なのか
    •  疲労破壊はなぜ起きるのか
  2. 破壊力学パラメータ
    •  応力拡大係数
    •  エネルギ解放率
    •  J積分とその応用
  3. 破壊力学の利用 --- 機器の保守・管理のために
    •  き裂検出技術
    •  応力拡大係数の計算
    •  破壊靱性値の測定
    •  疲労寿命の推定
    •  破壊事故解析
  4. 損傷許容設計
    •  原子力、航空機
  5. 弾塑性破壊力学
    •  HRR場とJ積分
2-5 板成形および管材成形の強度・剛性CAE-II
〔桑原利彦@東京農工大〕(60)

平面応力状態下で2軸引張応力を受ける金属材料の成形性評価手法について講演する。

  1. 応力を基準とした成形限界の評価手法
    • アルミニウム合金管および冷牽・焼準された電縫鋼管を研究対象に選び、軸力-内圧型CNC2軸応力試験機を用いて、さまざまな負荷経路における成形限界ひずみおよび応力成形限界応力を測定した。アルミニウム合金管においては、成形限界をひずみ空間で表示すると、成形限界線はひずみ経路に依存して大きく変化するが、成形限界応力を応力空間にプロットすれば、それらは一本の曲線(成形限界応力線)上に集中し、ひずみ経路依存性が消失することが明らかとなった。鋼管については、材料のひずみ硬化挙動の様態が成形限界応力のひずみ経路依存性に深く影響を及ぼすことを明らかにした。
  2. 簡易バルジ試験法による鋼管の成形性評価
    • 管材の成形限界を簡便に測定するための材料試験法を確立することを目的として、簡易液圧バルジ試験機を考案・製作した。そして、材質、肉厚、造管工程の異なる8種類の電縫鋼管を対象として、成形限界試験を行った。さらにバルジ変形における管材の塑性変形挙動についてFEMシミュレーションを行った。その結果、以下の知見を得た。
    •  (1) 造管工程により、管材の肉厚分布の均一性が異なることがわかった。そして、肉厚が均一な素管ほど成形限界が向上することが明らかとなった。
    •  (2) 管材のバルジ変形を精度よくシミュレーションするためには、管材のモデル化を行う際に、造管工程における管材のひずみ履歴(降伏応力と肉厚の不均一)を忠実に再現する必要があることを明らかにした。