非線形CAE勉強会

第35期非線形CAE勉強会・シラバス

 

「製造プロセスの新展開とシミュレーション」

第4日目(2019/6/16,9:30〜16:50)

4-1 複合材料の強度設計
〔平山紀夫(日本大学)〕

複合材料は、2種類以上の異なる素材を組み合わせてつくられる材料である。それぞれの素材の長所を生かし、短所を補うことによって単一の素材にはない機能を実現することができる。例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は、高い強度を持つ炭素繊維と軽量で耐食性に優れたプラスチックを組み合わせることで、単一の素材では実現できない比強度を実現している。その一方で、複合材料の強度設計では、強化材、母材、材料界面といった複数の破壊状態が混在して強度の異方性が現れるため、その破壊強度の予測が非常に難しい。さらに、最近の研究では、強化材や母材にひずみ速度依存性があることが明らかとなり、衝撃強度の予測をより難しくしている。本講演では、従来から提案されている古典的な複合材料の破損則と、数値材料試験による複合材料の破損予測について解説する。そして、代表的な強化繊維が持っているひずみ速度依存性の実験データと複合材料の衝撃強度をFEMにより予測する場合の考え方についても紹介する。

  1. 複合材料の特性
    • 1.1 複合材料とは
    • 1.2 軽くて強い
    • 1.3 設計できる材料
  2. 複合材料の破損則
    • 2.1 最大応力説
    • 2.2 最大ひずみ説
    • 2.3 相互作用説
    • 2.4 破損則の評価
    • 2.5 数値材料試験による強度評価
  3. 複合材料の衝撃強度
    • 3.1 樹脂材料のひずみ速度依存性
    • 3.2 強化繊維のひずみ速度依存性
    • 3.3 ひずみ速度依存性を考慮した解析
    • 3.4 繊維基材の形態が衝撃特性に及ぼす影響
  4. 複合材料の強度設計における注意点のまとめ
4-2 先進複合材料におけるマルチフィジックス/マルチスケール解析
〔岡部朋永(東北大学)〕

航空機向け先進複合材料の分野においては、マルチフィジックスあるいはマルチスケールといった解析ツールの開発が急ピッチで進められている。特に産業界からは、電子、原子といった目に見えない小さなスケールからのボトムアップによる仮想的認証(バーチャルテスティング)とマクロスケールからのトップダウンによる最適材料設計という相異なる方向からの解析ツール使用が強く求められている。また今後は、これら解析ツールを構造最適化のような実製品の設計に結び付けることも予想される。そこで、本講演では、まずは現状の研究動向概要を紹介し、その上で、SIP2期で取り組んでいるマルチフィジックス/マルチスケール統合解析ツールの開発について紹介したい。

  1. 航空機向け先進複合材料の研究動向
  2. ボトムアップバーチャルテスティングと損傷許容設計
  3. 自己組織化マップを用いた多目的最適材料設計
  4. 航空機複合材主翼最適設計
  5. マルチフィジックス/マルチスケール(MP/MS)統合解析ツール
4-3 複合材CAE解析技術の紹介
〔林信哉(JSOL)〕

今日の製品開発では、CAE解析による設計支援が広く実施されており、製品開発の効率化に大きな成果を上げている。特に、近年はハードウェアの劇的な性能向上にともなって、大型製品を詳細にモデル化したシミュレーションが可能となってきている。さらに、新たな解析手法が考案され、CAE解析の適用エリアは年々拡大している。大型製品のCAE解析が適用されている分野として自動車の設計開発が知られている。現在、自動車分野では排出ガス規制が強化され、大幅な燃費向上を達成するために車両軽量化が求められている。この要求に対応するために、金属に代わる高強度・軽量材料として炭素繊維強化樹脂CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)が注目されているが、材料費はもとより加工コストの高さが課題となっている。そのため、CFRPの成形形状や強度を製品レベルで高精度に予測することができる新しいCAE解析技術が求められている。本講演では、具体的な解析事例により最新の複合材CAE解析技術を紹介する。

  1. 複合材CAE解析について
  2. 連続繊維強化複合材のプレス成形解析
  3. 不連続繊維強化複合材の圧縮成形解析
  4. 複合材の強度予測CAE解析技術
  5. まとめ
4-4 接着剤の力学
〔佐藤千明(東京工業大学)〕

近年の接着剤の進歩や複合材料の普及などにより,自動車や航空機などの主要な構造を接着剤で接合するケースが増えている.当然,接合部の強度設計が重要になり,有限要素法(FEM)による構造解析が必要になるが,接着剤層が非常に薄く,しかも材料特性も複雑なため,計算が容易でない場合も多い.本講習では,接着接合部のFEM解析を行う上で重要なポイントについて解説する.

  1. 応力特異性とFEM計算の難しさ
  2. 薄い接着剤層の取り扱い
  3. 接着剤の材料物性
  4. バルクと界面強度
  5. Cohesive Zone モデル
  6. TAPO モデル
  7. 熱応力
4-5 ばらつき・不確かさを考慮した確率的シミュレーション
〔高野直樹(慶応大学)〕

加工誤差、不確かさをともなう境界条件の影響や素材の物性値のばらつきなどを考慮したロバスト設計のためのFEM解析手法の幅を広げ、信頼性の向上を図るためのモデリング手法、確率的シミュレーション法について動向、事例を紹介する。IoTの発展により、実現象のばらつきをともなうデータが収集された際に、確率的シミュレーション要因推理と対策の検討に有力なツールとなりうると期待される一方、種々の困難点が立ちはだかる。本講演では、難しさ、勘所、CAEツールといった実用面をにらみつつ、以下の目次にしたがって、最近の研究成果をまとめて紹介する。

  1. イントロダクション
  2. ばらつき・不確かさを考慮した確率的シミュレーションの難しさ
  3. ばらつき・不確かさのモデリングにおける考え方、勘所
  4. 確率的シミュレーション法とツール
  5. まとめ