非線形CAE勉強会

第42期非線形CAE勉強会・シラバス

 

「CAEにおけるDX」

第4日目(2023/6/25(日) 9:30〜16:30)

4-1 データ同化の基礎
〔山中晃徳(東京農工大)〕

ベイズの定理に基づき実験と数値シミュレーションをつなぎ、数値シミュレーションの高精度化や未知パラメータの推定方法として、データ同化が注目されている。本講義では、データ同化の基礎からはじめ、各種のデータ同化アルゴリズムの数値シミュレーション(フェーズフィールドシミュレーションや弾塑性有限要素シミュレーション)への実装事例も踏まえて説明する。

  1. 数学的基礎
  2. データ同化の基礎
  3. 逐次データ同化と非逐次データ同化
  4. データ同化アルゴリズムの実装事例
  5. まとめと展望
4-2 工作機械のデジタルツインの構築に向けて
〔松原厚(京都大学)〕

工作機械は,運動精度と熱的な位置の安定性(数〜数10μmオーダ),剛性(1000N/μm程度),運動速度(並進で数〜数10m/min,回転で1〜2万rpm)が要求され,これらを両立する設計は年々難しくなっている.設計の最適化の観点から,デジタルツインに対する期待は大きいが,複雑な平衡条件を考慮し,数μmオーダの変形を予想することは極めて難しい.このためには解析の目的を明確にし,物理現象解析から構築した物理モデルを用いるなどの工夫が必要である.本セミナーでは,このような事例を中心にモデル構築の考え方と応用例の解説を行う.

  1. 工作機械の機能と性能予測のためのモデルにおける問題点
  2. 剛性予測のための案内の力学モデル
  3. 案内の摩擦モデルと運動制御モデル
  4. 振動予測のための機械と床接触の力学モデル
  5. 今後について
4-3 衝突安全評価におけるDX ―人体有限要素モデルTHUMS*の開発―
(*THUMS: Total Human Model for Safety)
〔岩本正実(豊田中央研究所)〕

車両の衝突安全性評価が、ダミーを用いた衝突実験からバーチャル衝突実験に変革する兆しが見えつつある。人体の有限要素モデルTHUMSの開発の経緯を紹介しながら、人体モデルを用いたバーチャル衝突実験と、将来的に期待される実事故再現への取り組みについて説明する。

  1. 衝突安全評価のDXの必要性
  2. 人体のDX
    • 2.1 バーチャル人体モデルの開発
    • 2.2 デジタルツインによるモデルの検証
    • 2.3 バーチャル衝突実験による安全性評価
  3. 実事故再現DXへの取り組み
4-4 シミュレーションという思想の変遷とDX
〔小林卓哉(メカニカルデザイン)〕

シミュレーションという技術は,大規模な複雑系の中から難しすぎもしない簡単すぎもしない中庸なシステムを取り出し,その一部をより簡単なシステムで代替させることによって物事の本質を見きわめる試みである.今日,このような試みが計算機上で手軽に実感できるようになると,理論,実験,生産といった領域を分ける壁が低くなり,われわれの経済行為はひろくシミュレーションの一種であるという認識が広がってきた.経済行為は数の問題であるので,シミュレーションという新しい考え方の方向性が,データすなわち「量」によって変化することがあり得る.設計,いわば質の問題を,量の問題といかに折り合いをつけるか?DXという新しい思潮について考えてみたい.