非線形CAE勉強会
第46期非線形CAE勉強会・シラバス
「最適設計とCAE 〜基礎と応用が織りなす設計プロセスの探究〜」
第4日目(2025/6/21(日) 9:30〜17:10)
4-1 | 最適設計法の基礎・応用・実践 〔北山哲士(金沢大学)〕 |
本講義では,最適設計を実践する際に必要となる知識全般について概説し,いくつかの実践例を紹介する.はじめに,最適設計と満足化設計の相違や定式化について説明し,最適解を求める代表的な手法を紹介する.その後,多目的最適化の考え方や解の概念,手法等について説明する.これに関連し,大域的最適化についても簡単に紹介する.また,応答曲面(サロゲートモデル)や逐次近似最適化について説明し,最後に最適設計の実践例をいくつか紹介する.
- 最適設計の考え方
- 多目的最適化と大域的最適化
- 応答曲面と逐次近似最適化
- 最適設計の実践例
4-2 | 計算力学によるソフトマテリアルの運動解析と運動制御 〔垂水竜一(大阪大学)〕 |
柔軟な素材で構成されたソフトロボットは、私達の生活環境に近い多様な分野への応用が期待されているが、その運動には大変形、座屈不安定、自己・環境接触、摩擦など複雑な要素が含まれるため、現代的なCAEによる設計は容易でない。本講義では、講師らのグループがこれまでに進めてきたMPM法を用いたソフトロボットの運動解析・制御について、その理論と解析例を紹介したい。
- リーマン多様体を用いた連続体の運動学
- Materials Point Method
- 2.1 FEMによる離散化と構成則
- 2.2 流体を含む構造の解析
- 2.3 接触解析
- ソフトマテリアル・ソフトロボットの解析例
- 3.1 きゅうりの巻きひげの運動解析
- 3.2 空気圧駆動アクチュエータ
- 3.3 三軸型ベンディングアクチュエータ
- 3.4 機械学習による運動制御
4-3 | 構造設計のための3D生成AIの基礎と応用 〔西口浩司(名古屋大学)〕 |
本講義では、構造設計の分野における3D生成AIの最新動向を概観し、特に力学的パラメータに基づいて形状を生成するAI技術の基礎と応用可能性について解説します。DeepSDFをベースとした深層生成モデルの仕組みを理解し、製品設計への活用に向けた知見を得ることを目的とします。
- 構造設計における課題と生成AIへの期待
- - 近年の生成AIの概観
- - 3D生成AIとは?(画像生成AIとの比較、Text-to-3Dの現状)
- 構造設計のための3D生成AI:なぜ難しいのか?どう実現するのか?
- - 既存の3D生成AIの限界:力学的情報の欠如
- - 力学的情報を持つ大規模データセットの必要性
- 3次元形状の深層表現モデルの基礎
- - 3次元形状のデジタル表現:多様なアプローチ
- - 符号付き距離関数(SDF: Signed Distance Function)とは?
- - DeepSDF:SDFを学習するニューラルネットワーク
- - ネットワーク構造(デコーダ型)
- - 入力(座標)と出力(SDF値)
- - 学習プロセス(損失関数)
- - 潜在ベクトル (Latent Vector) による多様な形状の学習と生成
- - 単一ネットワークで複数形状を表現する仕組み
- - オートデコーダ型アーキテクチャの考え方
- 力学的パラメータに基づく3D生成AIへの拡張
- - 構造設計への応用を目指したDeepSDFの拡張
- - 力学的パラメータ(ひずみエネルギー、荷重方向、体積、寸法等)の入力
- - ネットワークアーキテクチャの工夫
- - 力学的パラメータと潜在ベクトル、座標情報の統合
- - Positional Encodingによる高周波形状の学習促進
- - 学習済みモデルの性能検証
- - 汎化性能:未知の形状をどの程度正確に再構築できるか?
- - Parameter-to-3Dタスク:指定した力学的パラメータを満たす形状を生成できるか?
- - 構造設計への応用を目指したDeepSDFの拡張
- 応用例と今後の展望
- - 構造設計への応用イメージ
- - ギガキャスト構造のような一体成型部品の設計支援
- - 衝撃吸収特性など特定の性能を持つ部材の形状提案
- - 今後の研究開発の方向性
- - より複雑な力学特性や製造制約の考慮
- - 大規模言語モデル(LLM)との連携による対話的設計インターフェース
- - 自律的な学習・最適化
- - まとめ:3D生成AIが拓く未来の構造設計
- - 構造設計への応用イメージ
4-4 | CAE×データサイエンスを成功させるための”物理”の必要性 〔浅井光輝(九州大学)〕 |
モノづくりではCAEはあたり前の技術となり、トポロジー最適化により計算機が新しい構造形態を創成し,その形態をそのまま3Dプリンタにて造形することができる時代になってきた。一方、CAEへの要求も高まり、複雑な現象を解く、また3Dの詳細な計算結果が求められ、計算時間は増加の一途をたどる。同時に、昨今では生成系AIなどの機械学習(ML)の進歩は著しい。なかでも、先の物理の数値計算をMLへと転換しようとするScientific MLという分野が隆盛を極めている。本講義では、Scientific MLで注目されている技術の一つPhysics InformedNeural Networks(PINNs)について紹介する。そして、正しく使いこなすには、機械学習だけでなく、“物理(非線形力学)”の知識が重要性となることを、実例をもとに解説する。
- 一般的な力学計算の手順のおさらい
- Neural Networkによる力学計算の戦略の種類
- PINNsとその特徴
- 3.1 損失関数の設計
- 3.2 自動微分の意味と役割
- PINNsの改良事例
- 4.1 不確実なデータの取り扱い=質的data-poor
- 4.2 観測困難な事例の取り扱い=量的data-poor
- 4.3 損失関数における重み
- 4.4 境界条件処理の精度向上